夕暮れの防波堤で、ぼぉぉ、っと釣り糸を垂れていると、自然からいろんなプレゼントをもらえます。
幼い頃、伊豆の防波堤で父親が釣り上げた黒鯛がとても大きく見えたこと。
マムシに怯えながら、やっとの思いで捕まえたミヤマクワガタ。
果たし損ねた約束や、今でも思い出しては恥ずかしくなるような、恋の話。
最初で最後だった、ブルーハーツのライブ。
真夏の音楽室。
足の長さがでたらめな、実家のテーブル。
壊れてしまったまま、所在無さ気なコーヒーメーカー。
学校を途中で抜け出して、近所の末広商店街で友達とかぶりついた焼き鳥。
大好きだったあの娘と、汗だくで自転車を漕ぎながら見に行った若洲公園の大風車。
かつての愛犬の散歩道。
恩納村の夕暮れ。
悲しくも無いのに、思い出すと涙が出そうになるような、そんな思い出。
切り取って歌うにはあまりにもうろ覚え過ぎるもんだから、なるべく克明に思い出すために、おれには夜釣りが必要なんだな。
港の小さな防波堤で 夜を迎えるその前に
釣竿仕舞って帰ろうか 口笛を吹きながら
港の小さな防波堤で 暮れ行く今日を見送るとき
果たし損ねた約束を ふと思い出してしまった
帰る場所をひとつふたつ
思い浮かべては足を止める
しまいかけた今日の日を
名残惜しげに取り出して
港の小さな防波堤で 口笛を吹いている
帰る場所をみっつよっつ
思い浮かべてはあくびをする
しまいかけた昨日までを
事も無げに海へ放り投げて
港の小さな防波堤を 立ち去っていくんだな
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